私たち株式会社Stucco Plusは、イタリア漆喰をはじめとする特殊左官仕上げのプロフェッショナルとして、数多くの空間づくりに携わってまいりました。
この度、弊社では長年の課題であった「素材選定のイメージ共有」を革新するため、建築 × テクノロジーで業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業である株式会社SAMURAI ARCHITECTSと共同で、AIとWebGLを活用した「Stucco 3D Simulator」を開発いたしました。また、本システムの開発と並行して、建築素材のデジタル化を推進するプロジェクト「MATERIAL CLUB」を共同発足いたしましたことをご報告いたします。
なお、本システムに関わる技術は現在特許出願中です。
1. 開発の背景:埋まらない「30cmの壁」
建築・インテリアの現場において、素材決めは最も重要であり、かつ難しい工程の一つです。 私たちも日々、お施主様や設計士様に30cm角のカットサンプルをご提示していますが、そこには常に「想像力のギャップ」が存在しました。
「この小さなサンプルが、壁一面になった時どう見えるのか?」
「照明が当たった時の艶感や、家具が入った時の陰影はどうなるのか?」
物理的なサンプルだけでは、完成後の空間の空気を伝えきれない——。
この課題を解決するため、私たちはSAMURAI ARCHITECTSの技術協力を得て、「塗装や左官材を、まるで服を試着するようにシミュレーションできるツール」の開発に着手しました。
2. システムの機能:AI × 物理ベースレンダリングによる「デジタルツイン」
今回共同開発したシミュレーターは、単なる画像合成アプリではありません。職人のこだわりをデジタル上で再現するため、最新のテクノロジーを実装しています。
空間認識AI(Depth Estimation)
撮影された一枚の部屋写真から、AIがメートル単位の深度(奥行き)を推定します。これにより、壁面のおおよその実面積を算出。予め設定された左官材テクスチャの実寸係数と照らし合わせ、スケールを自動調整することで、実際の施工イメージに限りなく近いシミュレーションを実現しています。
さらに、壁面だけでなく空間全体を一度3Dとして再構築。対象となる壁面領域を、物理特性を持ったマテリアルデータに置換します。その上で、写真内の照明の当たり具合を自動解析し、3D空間内に仮想ライトを配置。パースの狂いがない自然な合成と、リアルな陰影表現を両立したレンダリングを実現しました。

今後も、精度向上や新機能の追加を継続して行っていく予定です。
物理ベースレンダリング(PBR)
本システムでは、素材の「色(ベースカラー)」だけでなく、複数のテクスチャマップを組み合わせた物理ベースレンダリング(PBR)を採用しています。
- ノーマルマップ:表面の微細な凹凸を表現し、左官特有のコテ跡や粒子感をリアルに再現
- ラフネスマップ:光の反射率を制御し、マットな仕上げから艶やかな磨き仕上げまで表現
- ハイトマップ:実際の高低差を持つ立体的な凹凸を表現し、より深みのあるテクスチャを実現
- メタルマップ:金属調の左官材(メタルーチェ等)における金属光沢の質感を再現
これらの物理計算に基づいたシミュレーションにより、光の当たり方による表情の変化や、左官特有の滑らかな艶をブラウザ上で忠実に再現します。

インストール不要のWeb完結型
専用ソフトは不要です。PCやタブレットのブラウザさえあれば、設計の打ち合わせ現場ですぐに利用可能です。




3. 導入の効果
本システムの導入により、建材選定のフローは大きく変わります。
意思決定の迅速化
「塗ってみたらイメージと違った」というリスクを未然に防ぎ、お施主様の納得感を高めます。
色味を変更しシミュレーションすることも可能であるため、いくつものパターンを比較検討することが可能です。

また、「天井まで塗るべきだろうか」「アクセントウォールはどの程度強調しようか」といった、空間全体の雰囲気を考えないと見えてこない解を短時間で導き出すことが可能です。
提案の質の向上
言葉では伝えにくいテクスチャの魅力を、視覚的に、かつ瞬時に共有することが可能になります。
さらに、当システムではユーザーがご自身で撮影した空間画像をアップロードする機能に加え、予め用意された3D空間を直感的に操作してシミュレーションできる機能も備えています。これにより、写真から推定する精度よりも高い再現性で、空間の雰囲気をより正確に掴むことが可能です。今後も、リビングやオフィス、店舗など、様々なプリセット空間データを拡充していく予定です。




家を購入する、リフォームする、お店を作る、美術館を設計する——こうした建築のシーンは、お施主様にとって人生で何度もあるものではありません。だからこそ、事前にリアルなシミュレーションができて初めて、不安が解消されるのではないでしょうか。むしろ私たちは、このような体験はすべての素材メーカーが提供すべき"標準機能"であると考えています。
4. 今後の展望:「MATERIAL CLUB」共同発足とパートナー募集
このシステムは、一つの成果に過ぎません。
私たちは、このビジョンを業界全体へ広げるため、共同開発パートナーである株式会社SAMURAI ARCHITECTSと共に、建築素材のデジタル化を推進する「MATERIAL CLUB」を立ち上げました。
🔗 MATERIAL CLUB 公式サイト 建築素材のデジタル化を推進するコンソーシアム
MATERIAL CLUB
🔗 プレスリリース (PR TIMES) PR TIMES
プレスリリース
MATERIAL CLUBは、設計士、3Dモデラー、素材メーカー、そして施工会社が連携し、「リアルな素材感を持つ3Dデータ(マテリアル・デジタルツイン)」を建築業界のスタンダードにしていくエコシステムです。
実際に、本シミュレーターでショーケースとしてラインナップされている空間モデルは、リアルとバーチャル双方の建築・空間デザインで活躍されている堀江優太氏によるものです。従来の「リアルかデジタルか」という二項対立を超え、双方の強みを活かしたコラボレーションが既に始まっています。これこそが、MATERIAL CLUBが目指す業界横断的なシナジーの象徴です。

堀江優太|Yuta Horie
https://note.com/yuta_3dcgパートナー企業の募集
私たちは、この技術とプラットフォームをオープンにしていきたいと考えています。
世界中の塗料メーカー様、左官材メーカー様、タイルメーカー様、建材メーカー様。
貴社の素晴らしい製品をデジタル化し、世界中の建築家やデザイナーが「Web上で即座に試せる」環境を一緒に作りませんか?
- 自社カタログをデジタルシミュレーター化したい
- MATERIAL CLUBの活動に関心がある
- 建築素材のDXを共に推進したい
そうお考えの企業様、および3Dモデラーや設計士の方は、ぜひお気軽にDM等でご連絡ください。
リアルな素材の美しさを知る私たちだからこそ、作れるデジタル体験があります。
お問い合わせは、弊社Webサイトのお問い合わせフォーム、またはSNSのDMよりお待ちしております。

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