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イタリアで学んだ、ストゥッコマルモという手仕事

曲面にも家具にも──現代に進化したイタリア左官技法の魅力

2025/07/07
イタリアで学んだ、ストゥッコマルモという手仕事

「Stucco Marmo(ストゥッコマルモ/シュトックマルモ)」とは、石膏と顔料を練り合わせて大理石模様を作り出す、ヨーロッパで発展した左官仕上げ技法のひとつです。仕上げ面は緻密に磨かれ、本物の大理石と見まがうような深みと光沢を持ち、しかも職人の手作業によって表情豊かに仕上げられるのが特徴です。

実はこの技術、日本でも非常に特殊な場所で用いられています。和歌山県白浜にある「ホテル川久」のエントランスホール──金箔天井を支える24本の青い柱は、すべてこのストゥッコマルモによるもの。触れれば冷たく滑らかなその柱は、大理石ではなく、職人の手で練り上げられ、塗られ、磨かれてつくられた“練り石”です。

そんな伝統的かつ現代にも通じる左官技術を、今回イタリア・ヴィチェンツァの「Stucco Italiano」社にて学ぶ機会を得ました。

「シュトックマルモ(Stucco Marmo)」は、地域や時代によって「スカリオラ(Scagliola)」という別名でも知られています。特に18世紀のヨーロッパではこの名で呼ばれ、当時の宮殿や劇場の内装を彩る高度な装飾技術として発展しました。英語圏では「Scagliola」としての呼称が一般的で、近年ではこの言葉で検索されることも増えています。

イタリア語では「Scagliola(スカリオラ)」は「石のかけら=スカリ(scaglie)」に由来し、大理石を模した漆喰装飾としての性格を端的に表しています。Stucco MarmoとScagliolaは本質的に同じ技術を指しており、用途や呼び名に違いがあるだけです。

工業製品では得られない質感


旧来のような石膏や膠ではなく、現代の建材環境に合わせた構成となっており、安定した施工性と美しい仕上がりが得られます。それでも仕上げの表情は「手」の動き次第。わずかな圧力や角度の変化で、表面に現れるマーブル模様や光沢が大きく変わる──まさに職人技が生きる仕上げです。

技術だけではなく、感覚を教わる



研修を指導してくださったZeljko先生は、現地でも名の知られた職人で、その教えは常に実践的で理にかなっており、私たちの理解を深めるうえで非常に貴重なものでした。

なかでも印象的だったのが、粘土状の材料を平滑に仕上げるために使用していた鏝(こて)。Zeljko先生はこの鏝を、鍛冶職人に特注して作らせたという非常に重厚なもので、素材に負けず、力をしっかりと伝えるための構造になっていました。その仕上がり精度の高さは、まさに道具と技術が一体になった証でした。

帰国後、私たちも同様の鏝を探していたところ、ご縁があり「梶原鏝製作所」様より、特別な鏝をお譲りいただくことができました。鉄加工においても長い歴史を持つ日本の職人技が、こうしてイタリアの左官文化と響き合い、私たちの施工に新たな可能性を与えてくれています。

「整っていない」がもたらす豊かさ

この仕上げにおいて、「完璧な均一性」は必ずしも美ではありません。かすかな凹凸や色の濃淡の差が、むしろ奥行きや味わいを生み出します。空間に"呼吸"を与えるようなこの表現力は、量産された建材にはない魅力です。


曲線や床、家具にも使える汎用性

今回使用したStucco Marmoは、伝統的な材料と比較して、下記のような進化を遂げています。

  • 薄塗り高速施工:乾燥が早く、作業時間を大幅に短縮可能。
  • 耐水・耐久性向上:湿気の多い環境でも膨潤や劣化が少なく、水回りにも対応。
  • 超低VOC:EU基準の1/200以下で、室内空間への環境負荷を大きく低減。
  • 物理強度(6H硬度):高密度に磨かれた仕上がりで、床面やテーブルトップ、家具などにも適用可能。
  • 意匠自由度:層の積み方や色彩の組み合わせ次第で、大理石風、石灰石風、アルバスター調など多彩な表現が可能。

体験して初めて分かる「質感の文化」

この仕上げは、写真やサンプルでは到底伝えきれない魅力を持っています。実際に施工し、磨き、光の中でその表情を見る──その過程に触れることで、素材が空間に与える影響の大きさを体感できます。

イタリアでは1㎡あたり1,000ユーロ


私たちスタッコプラスでは、この技術を持ち帰り、日本の建築環境に合わせた形で施工性やコスト面を見直しながら、さらに磨き上げています。素材の魅力はそのままに、より効率的かつ柔軟な施工方法を追求中です。

仕上げに「空気」を与える左官

見た目の美しさだけでなく、空間の温度感や居心地の良さまで左右するのが、この技法の持つ力です。「塗る」ことを通して、空間に新しい質感と時間の流れを加えていく──そのような左官の在り方を、今後も大切にしていきたいと考えています。

ご相談お待ちしております

ストゥッコマルモ(シュトックマルモ)にご興味ある方、施工を検討されている方、まずはお気軽にご相談ください。私たちスタッコプラスが、素材と技術、そして空間への思いをもってご提案いたします。


最後に、今回の貴重な学びの機会を与えてくださったZeljko先生、そして毎日献身的にサポートしてくださったChiaraさんに、心より感謝申し上げます。